イギリス 「議会が6月総選挙承認」 - 結束を図る賭けに出たメイ首相と新たな政治リスク

(出典 REUTERS ロイター

英国のメイ首相は、自身の政治家としての評価が最も高まっている局面をうまく利用しようとしている。6月8日に総選挙を前倒しで実施することは、英国の指導者として国民からしっかりとお墨付きを得る最適な時期と言える。

早期選挙に踏み切るべき強い理由は3つある。まずメイ氏が率いる保守党は今、下院で野党側をわずかに17議席上回るだけの勢力にとどまっているが、世論調査における支持率は野党より圧倒的に高い。ユーガブの最新調査を見ると、保守党と最大野党・労働党の支持率の差は21%ポイントに開いている。2月の補欠選挙では、政権与党の候補が35年ぶりに勝利した。

総選挙はメイ氏個人の信任投票ともいえる。同氏は昨年6月の国民投票後の政治的な混乱の中で首相の座に就いたが、まだ選挙の洗礼は受けていない。ここで勝利すれば、欧州連合(EU)離脱が現実味を増すとともに、英経済が苦境に陥ったとしても、ある程度政治的立場が守られる。2007年にゴードン・ブラウン氏が首相になった時点ですぐに解散総選挙を決断せず、3年後に辞任に追い込まれたという記憶は、選挙の先延ばしをやめさせる効果的な働きをしている。

また欧州の選挙日程はメイ氏に有利に作用する。今年はフランス、ドイツと国政選挙が続くため、ブレグジット(英国のEU離脱)交渉はどんなに早くてもこの両国で新政権が発足した後になる公算が大きい。そしてもし英国が交渉期限の2019年3月までにEUと何らかの合意ができず、単一市場から退出する事態になっても、メイ氏は2022年までは再び選挙の試練に立ち向わずに済む。

選挙前倒し戦略にはもちろんリスクもある。選挙戦を通じてメイ氏は、これまであいまいにしてきたブレグジットで何を優先するかをはっきりさせなければならない。これは保守党内にくすぶる対立の火種をあおり、親欧州の有権者をライバルの自由民主党支持に向かわせかねない。だが選挙で再び十分な多数議席を獲得すれば、メイ氏は向こう10年首相を続けられる。

メイ氏は18日、選挙前倒しへの反対意見を取り下げたのは「最近」で、なおかつ「気が進まなかった」と打ち明けたものの、「確実性と安定性」を得る唯一の道だとも強調した。より説得力を持つ説明は、メイ氏が遅ればせながらも、自分の政治的資産が今後これほど高くなることは二度とないと気づいたからではないか。
(出典 REUTERS ロイター

 

イギリス議会が6月8日の総選挙実施を承認

4月19日、イギリス議会はメイ首相が求めた6月8日の総選挙実施を承認した。メイ首相は「国家が重大局面を迎える中、議会は分裂ではなく結束が必要だ」「総選挙により任期5年の強力かつ安定した政権が誕生すれば、EU離脱交渉を成功に導くことができる」と訴えた。

EUのトゥスク大統領(欧州理事会議長)は、「メイ首相と電話で良い会話をした」「ブレグジットの監督はヒッチコックだ。まず地震があって、緊張が高まる」と、ツイッターの個人アカウントでコメントした。

また、ドイツのガブリエル外相は、「ブレグジットが決まった昨年6月の英国民投票以来、予測可能性と信頼性がこれまで以上に重要になっている」と語った。

一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は、「特別の関心はない。国際情勢のいつも通りの監視程度と言っておこう。我々の問題ではない」と語った。
 

メイ首相が「総選挙」を決断した背景

イギリスは2016年6月の国民投票でEU離脱派が勝利し、メイ首相が2017年3月、正式に「離脱を通知」して「後戻り」は出来ない状況になった。

イギリスの次回の選挙は2020年に予定されていたが、与党は早期の解散総選挙を選択し、実施する事が認められており、その権限が4月18日、メイ首相によって行使された。

メイ首相がサプライズ演説で総選挙を表明した背景にあるのは、欧州単一市場からの撤退などハード・ブレグジット(強硬離脱)の方針に、野党の労働党やスコットランド国民党などが強く反発している事だ。

現在、与党保守党は下院650議席のうち330議席で、過半数をわずかに確保している状態だ。仮に保守党内から数人程度、メイ首相の離脱方針に造反すれば行き詰まる危険性がある。

また、メイ首相の弱みは、イギリスにとって最大の政治的変化をもたらすEU離脱を、自らへの委任を受けずにそれを断行しようとしている事だ。

総選挙に勝利する事が出来れば、「首相」としての地位を盤石に整えてEU離脱交渉を野党の干渉なしに有利に進める事が出来るだけでなく、EU離脱の方向性について国民の信任を得たと主張する事が出来る。
 

イギリスの選挙が新たに世界的な政治リスクを生みだすか?

世論調査では与党・保守党が支持率を伸ばしており、選挙に勝利すれば任期は2022年までとなり、メイ首相は、EU離脱交渉のみでなく新たな通商協定への移行期間も見届ける事が可能になる。

しかし、選挙戦の争点に「EU離脱の是非」がクローズアップされた場合、メイ首相の思惑とは違う方向に事態が動く可能性もあり、イギリスは新たな不確定要因を抱え込んだ事になる。

2016年、ブレグジットによって欧州のポピュリズム、アメリカの自国第一主義に火をつけたのはイギリスだ。2017年、またイギリスが世界に大きな影響を与える事になる。

かつて世界の陸地の約4分の1を領土として支配した大英帝国は、世界の覇権を握っていた。世界はイギリスを中心に動いていた。イギリスは、産業革命(技術革新)によって農業社会から商工業社会への変化をもたらし、世界の構造や人々の生活を一変させた。

イギリスのロンドンのシティは世界で一番競争力の高い金融街であり、今日私たちが利用している近代銀行の発祥も、1694年大英帝国が軍事資金を調達する為にシティに設立したイングランド銀行であるとされており、ロンドンの金市場は世界最古の歴史を持ち、創設は1666年にさかのぼる。

過去の歴史を振り返ると、歴史の大転換点には常にイギリスが絡んでいた。グローバル経済の発祥地であるイギリスで、自国第一主義が蔓延する事が意味しているのは、世界の歴史の逆回転だ。

2016年のブレグジットとトランプ政権の誕生は、その序章に過ぎない。

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